AI時代の英語力 ——「任せる英語」と「自分で話す英語」の境界線について

AIを仕事力アップのために使いこなす時代となりました
メールやチャットのやりとり、さらにはミーティング中の同時翻訳や議事録作成など、AIを活用すれば非常にスムーズに進めることができます。
実はこのあたりは拙著『ChatGPTで英語を武器に! 仕事力を劇的に変える最強戦略ガイド』の中で私が伝えたかったポイントでもあります。
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一方で、実際のビジネス現場においては、AIだけでは補えない領域がまだまだ多いと思います。
特にそれが顕著なのが「雑談」です。

会議の合間や、ビジネス後の食事の場など、たわいもない会話こそが相手との距離を縮め、信頼関係を築くきっかけになることが多いと思います。
「最近ハマっている趣味は?」「家族は元気?」そんなさりげない話題が次々と続き、リズムよく交わされる中で、「この人とまた話したい」「もっと深く関わってみたい」という気持ちが生まれるのではないでしょうか。
自分のキャラクターを伝え、相手のキャラクターを知る。相手に関心を持つ。こうしたやりとりは、今や雑談の中にこそ存在しているのかもしれません。

こうした雑談の場面では、AIはあまり助けにならない可能性があります。むしろAIを挟んでしまうと、味気なく、興ざめしてしまいますよね。
相手がどんな人間なのか、どんな価値観を持っているのかを知るには、自分の言葉で問いかけ、相手の言葉を直接受け取ることが欠かせないと感じます。

また、AIが高度に発達し、外国語による正確で効率的なやりとりが可能になったからこそ、あえて自分の言葉で伝える場面がより重要になってきたとも思います。
AIが整えた文章や翻訳は便利ですが、それだけでは相手の「人となり」や「熱量」は伝わりにくいものです。
ミーティングのブレイクタイムに、自分の思いや背景、なぜこれをお願いしているのかを、自分の言葉で熱く語れるかどうか。
まさにそこに、AIでは代替できない価値がある。

私はいつも、報道のニュースなどで世界のリーダーたちが対面で交渉する様子を見るたびに思うことがあります。
会議室のテーブルをはさんだフォーマルな会談の場では、きっと通訳を介して戦略的な交渉が交わされているのでしょう。
「BATNA」、「RV」、「ZOPA」等の言葉も浮かんできます。

一方で、休憩中や非公式な場面で彼ら・彼女らは、何を話しているのか、どう会話をしているのかのほうが気になります。
例えば、日本の交渉団のトップは相手のトップと直に言葉を交わし、自分のキャラクターや熱意を伝えられているのか。
そうしたやりとりこそが、信頼関係を築く上で極めて重要だと思っているからです。AIが介在しない生身の会話の中で、相手に安心感や信頼感を与えるのは、どれだけ自然に、そして人間らしく話せるかにかかっていると思います。

リアルの場面で自分のキャラクターや熱意を伝える雑談力やコミュニケーション力こそ、これからますます重要になってくるのではないかと。

次に英語学習についてです。目的の達成(=英語力の向上)だけを考えるなら、昔ほど学習に時間とお金を投入する必要性はなくなったと思います。
かつて私も英会話学校に通い、資格取得を目指し、少しずつ語彙や表現力を伸ばしていくプロセスそのものを楽しんでいました。
今ではAIによって一定の成果は容易に得られるようになりましたが、だからこそ限られた時間の中で「どこに力を入れるべきか」を見極めることが、より重要になったと感じています。

私は、AIを最大限効率的に、自分の目的に合わせて、正しく使いこなすためには、英単語や文法、ヒアリングといった基本的な英語力は今後も欠かせないのだと思います。
ベースの力があってこそ、AIの力を活用し、自分の手のひらの上で自在に操ることができるからです。

AI時代の今だからこそ、英語の学び方を見直し、「AIを活用しつつ、リアルのコミュニケーション力を磨く」というバランスを意識することが、これからの英語力の新しい形だと思います。