企業にある“村社会の論理”と転職市場のギャップ──なぜ評価の軸が変わるのか?

転職を考えたとき、ふと湧き上がる違和感。それは、「社内での評価」と「転職市場での評価」が、必ずしも一致しないという現実です。
このギャップの背景には、一部の古い体質の企業に今も残る“村社会的な価値観”があります。
本記事では、人材紹介の現場で数多くの転職を支援してきた経験をもとに、“社内評価と市場評価のギャップ”の構造と、それを乗り越えるための視点と戦略をご紹介します。

「空気を読む」「前例に従う」「長く在籍することが美徳」——こうしたローカルルールが評価軸になっている組織では、自社内での実力と、社外で評価されるスキルにズレが生まれがちです。

1.“村社会の論理”は、今も一部の組織に存在する

終身雇用・年功序列の時代背景の中で育まれた「村社会の論理」は、制度が変化した今でも、別のかたちで一部の企業文化に残っています。

たとえば:

  • 自分の意見より「前例」や「多数派」に合わせるのが無難とされる(例:本来は立ち止まるべきエスカレーターの右側を、周囲に合わせて駆け上がるような空気)
  • 意思決定において「根回し」や「全員の合意」が重視される
  • 転職を選ぶと「裏切った」とまではいかずとも、“残念だね”という空気が流れる

こうした目に見えにくい“空気の支配”が、キャリア判断を内向きにし、外の評価軸を見えづらくしてしまいます。

2.転職市場で見られる“評価軸”はまったく別のもの

企業内での評価と、転職市場での評価は、しばしばズレています。

転職市場で重視されるのは:

  • どんな成果を、どう再現できるのか
  • 他社・他業界でも通用するスキルや経験があるか
  • 新しい環境に適応し、成果を出す力があるか

つまり、「社内での信頼」や「社歴の長さ」より、「スキルの汎用性」や「成果の再現性」が重視されるということです。

3.なぜ“外に出る”と見え方が変わるのか?

多くの転職者が「社外に出たら、自分の経験が”意外に”高く評価された」と語ります。
これは、自分では当たり前だと思っていたスキルが、“村の外”では価値あるものとして捉えられるからです。

  • 自社特有だと思っていた業務フローが、他社にはない工夫だった
  • 上司との調整に費やした日々が、対顧客交渉力として評価された
  • 無意識のうちに培っていたリーダーシップが、組織運営経験として見られた

自分を“外の目線”で見直すことが、市場価値を知る第一歩になります。

4.“村の中”で培ったスキルは、外で武器になる

「うちのやり方しか知らないから…」という不安はよく耳にしますが、実際には多くのスキルが転用可能です。大切なのは“翻訳力”です。

  • 根回し・調整力
     → ステークホルダーとの合意形成や交渉スキルとして評価されます。
  • 空気を読む力
     → 組織内での柔軟な立ち回りや、コミュニケーション力として伝えることができます。
  • 年功マネジメント経験
     → チームのリード経験や、若手育成スキルとして置き換え可能です。

村の中で育ったスキルも、表現と言語を変えれば立派な市場価値になるのです。

5.外に出る前にできること

「転職=すぐ辞める」ではなく、「外の世界に目を向ける準備」から始めてみましょう。

  • 職務経歴書を“外向けの言葉”で整える
  • 転職エージェントに客観的なアドバイスを求める
  • 異業種交流会やビジネスSNS(LinkedIn等)で外の空気を吸う
  • 今の業務を、スキルの“棚卸し”として見直してみる

これらはすべて、キャリアの視野を広げるための“リサーチ活動”です。

6.評価の軸を知れば、キャリアの選択肢も変わる

  • 「村の中の評価」=「市場の評価」ではない
  • 外の視点を知ることで、自分の価値の“別の側面”が見えてくる
  • 転職は“逃げ”ではなく、“軸を変える戦略”でもある

今の働き方や評価に違和感を抱いているなら、それは「次のステージに進む準備段階」かもしれません。

まずは小さく外の空気に触れてみてください。
その一歩が、これまで見えなかったキャリアの選択肢を開いてくれるはずです。