キャリアは計画通りにはいかない——だからこそ見えてくるもの

・「将来を見据えて、このキャリアを選んできた」
・「転職の軸を持ち、ステップアップしてきた」

こう語る候補者は多いですが、実際のキャリアはそんなに計画通りに進むものではありません。
多くの転職希望者と話していると、スティーブ・ジョブズの有名なスピーチ「Connecting the dots(点と点をつなぐ)」を思い出します。

「未来を見て点(出来事)をつなぐことはできない。後から振り返ったときにしか、そのつながりは見えてこない。」

これは、まさにキャリアにそのまま当てはまる話です。

転職の決断は「計画的」だけではない
目的意識を持ってキャリアを歩むことは大切ですが、現実には以下のような理由で転職を決断することも多いのではないでしょうか。

-職場環境の変化(上司が変わった、経営方針が変わった)
-やむを得ない事情(家庭の都合、健康問題)
-そもそも入社時点で期待していたものと違った
-成長できる環境がない(現職では学べることが限られ、専門的な経験を積めない)
-給与・待遇への不満(市場価値と比較して給与が低い、評価制度に納得がいかない)

しかし、候補者が職務経歴書に書くストーリーや面接で話す内容には、後付けで「整えられた」部分が多く含まれていることもあります。
では、面接官やキャリアアドバイザーは、どのようにして「本当のキャリアの価値」を見極めるべきなのでしょうか?

面接官の視点——「キャリアの再現性」をどう見るか
企業の面接官が知りたいのは、候補者のストーリーではなく、過去の経験が再現可能かどうかです。
そのためには、以下の視点が欠かせません。

本人の語るストーリーに流されず、本当に自社で活かせる経験があるか?
過去の問題解決の手順を具体的に聞く(何が起きて、どう行動し、どんな結果が出たのか)
「当社ではこんな問題があるけど、どう対応する?」と実際の課題に当てはめて話をしてみる
単なる表面的な「転職理由」ではなく、「点と点の間にある経験やスキル」を見極めることが重要です。

キャリアアドバイザーの視点——「語られない価値」を見つける
一方で、キャリアアドバイザーの役割は、候補者の「語られたストーリー」を鵜呑みにすることではありません。
むしろ、本人すら気づいていないスキルや能力、キャリアの意味を見出すことが大切です。

点と点の間で強化されたスキルがないかを探る
面接官が評価しやすい形にキャリアのストーリーを整理する
転職者自身も気づいていない強みを引き出し、自信を持たせる
「意図したキャリア」ではなく、「振り返って意味のあるキャリア」を見つけることが、キャリアアドバイザーの重要な役割です。

Connecting the dots——後からつながるキャリアの意味
スティーブ・ジョブズは、2005年にスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチで、こう語りました。

「未来を見て点をつなぐことはできない。後から振り返ったときにしか、そのつながりは見えてこない。」

例えば、彼は大学を中退後、興味本位でカリグラフィー(書体デザイン)の授業を受講しました。
当時、それが何の役に立つかはまったく分からなかった。

しかし10年後、Macintoshを開発したとき、美しいフォントを作る基盤になり、結果的にコンピューター業界に革命をもたらしました。
つまり、「目の前の経験が未来のどこかでつながるかは分からない。でも、信じて続けることで、後から意味が見えてくる」という考え方です。

キャリアに「正解」はない——だからこそ、今できることを


転職も、キャリアの選択も、すべてが計画通りに進むわけではありません。
しかし、後から振り返ったときに、すべての経験がつながることもあります。

だからこそ、「この選択は正しいのか?」と考えすぎず、まずは動いてみることが大切。
目の前の仕事を全力でやる。次のステップを考えながら、一歩を踏み出してみる。

それが、結果として未来の「キャリアの点」としてつながっていくのではないでしょうか。